フォトグラファーのシェアリングサービスとAzure、AIの良い関係
今回は、フォトグラファーのシェアリングサービスともいうべき OurPhoto(アワーフォト) で利用されている Microsoft Azure の具体的な利用方法やメリットについて、Our Photo株式会社の代表である平野様とMicrosoft Azure のエヴァンジェリストである増渕様にお話を聞いて参りました。当社からは、プロジェクトコーディネーターの府川、そしてMCP有資格者である角川が参加しています。
Microsoft Azure の導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
OurPhotoについて
— まずはじめにOurPhotoというサービスについて教えてください。
平野(敬称略):
OurPhotoというサービスは、フォトグラファーと依頼者をマッチングする出張撮影サービスです。写真を撮って報酬を得たいフォトグラファーと気軽にクオリティの高い写真をとってほしい人とをマッチングさせるプラットフォームを提供しています。
会社としては「新しい写真文化をつくる」というVISIONを持っています。
今まで写真を撮ってもらうとなると写真館に行くとか、スマートフォンで撮影するという選択肢しかなかったと思いますが、もっと気軽にいい写真を撮れる場をつくりたいと思ったのがこのサービスをつくるきっかけです。
現在は、キャノンMJ さんと協業をして「カジュアルフォト」という撮影シーンを訴求しています。これは、記念日だけではなく家族のちょっとしたライフイベントなど、よりカジュアルなシーンでも気軽に撮影を依頼してみよう、という提案になります。
フォトグラファーの観点からいうと、「週末フォトグラファー」という新しい働きかたを増やしたいと思っています。今まで趣味で写真撮影をやっていた人や写真を撮りたくても撮る機会がないという人たちが活躍するための場を創れたらと考えています。
— フォトグラファーとしてOurPhotoに登録するために必要なものって何があるんですか?
平野:
フォトグラファーの登録には二段階のチェックがあります。最初はまずスキルを登録してもらいます。例えば、どのような機材を持っているだとか、その人の写真が(撮影依頼を受けるという点から)良いか悪いかを審査しています。
次の段階で直接フォトグラファーの方と面談させていただいて、写真の技術とコミュニケーションスキルが一定の水準を満たしているかどうかを判断しています。
— それでサービスの品質を維持しているのですね。それぞれのフォトグラファーのプライスは誰が設定していますか?
平野:
フォトグラファー自身が設定します。
ユーザー(依頼者)が、金額と実績(写真作品)とユーザーの評価を見てそのフォトグラファーに依頼をするかを判断しているので、価格が高くて評価が低いと依頼が減っていくこともありますし、その逆で価格が高くても作品のクオリティが高かったり、ユーザーの評価が高いと依頼が入りますので、プラットフォーム内でエコシステムが機能するようになっていますね。
あと、フォトグラファーのパーソナリティも依頼を受けるのに重要な要素になったりしています。例えば、モデルをやりながら自ら写真も撮るというフォトグラファーの方がおられるんですが、その方は写真のポーズを創る際に被写体の方とのコミュニケーションが上手で、撮影自体をスムーズに進めるスキルが高いです。他にも英語が堪能で外国の方とも問題なくコミュニケーションが可能な方、保育士をやっていて子供の扱いが上手く、お子さんのいい笑顔を撮るのが得意な方など、それぞれ強みを持っている人が多いので、そういった自身の特徴から選ばれるということもありますね。
府川:
こどもをあやすのが上手な方とかおられますもんね。
平野:
おられますね。スタジオアリスの店長をやっていた方も登録されていますよ。
一同:
それはいいですね。
Azureについて
増渕(敬称略):
元々、AIに興味があったからAzureを採用されたのですか?
平野:
最初からAIを使おうと思っていたわけではないですね。
サービスの特性上、ストレージがサービスの肝となるのがわかっていました。AzureならストレージとCDNでakamaiを使えるなどサービスに必要なインフラが整っているということ、あとはBizsparkというマーケティングも含めたMicorosoftのビジネス支援があったのが大きかったですね。
AIについては、サービスが伸長していくとともに写真データが蓄積されていくのを見て、次第にこのデータを有効活用したいというふうに考え始めました。
Azureなら機会学習の基盤を作らずにCognitive Servicesを利用して簡単に機械学習の恩恵を受けることができるので、蓄積されたデータの活用の機会が増えるのはないかと考え始めました。
ストレージ目当てで利用し始めたAzureでしたが、Cognitive Servicesも気軽に利用できるのでそこはラッキーでしたね。
増渕:
機械学習のエンジニアがいないとか、そもそもそういうことを構想できる人が社内にいない場合でもカジュアルに利用できるというのがCognitive Servicesの最大のメリットですからね。
府川:
我々としても機械学習をCognitive Servicesで提供されているAPIの中から何を使うのかを決めるところから始められるのは大変なメリットになりましたね。
Azureを利用していて仕事の領域がいい意味で広がったのはありがたいですね。
NHNテコラスのマネージドクラウドについて
— OurPhotoさんからみた時のNHNテコラスの評価はどうですか?
平野:
もう全部お願いしちゃっていると言っていいぐらい支援を受けており、NHN テコラスさんがいないとサービスが回らなくなっているような状態です。
ほとんど我々OurPhotoのチームの一員という感じでサポートしていただいているので、自社だけでは解決できないようなことが発生するとすぐにNHNテコラスさんに相談させていただいていますね。
インフラの安定性の確保と新しい機能追加に対してのテクニカルアドバイスという2つの点で、サービスを伸長させていく上では無くてはならない存在になっています。
府川:
このプロジェクトにおいては、今はアドバイザリー的な仕事のウェイトが大きいですね。
インフラに限ってというだけというわけではなく、DevOPS全般という感じですね。
CTOがこういう機能実装したいって考えた時に、サーバーサイドでどう対応するかというのは当たり前ですが、開発環境としてデプロイをどうしていくのかというところも含めてアドバイザーとして立ってる感じですね。
OurPhotoに関してはローンチ前の初期構築の段階から入らせていただいているので極力運用レスにすることができたんですよ。単純な監視とか障害対応みたいな従来型のMSPサービスは機能として排除して、それが必要のない環境を構築しました。VMが1台2台落ちたとしてもサービスに影響がでないインフラをつくってあります。
増渕:
じゃあ会話は監視の話ではなくビルドサーバーどうする?とかデプロイを早くするにはどうする?とかそういう会話になりますか?サービスの成長、プロフィットにつながる会話がなされているんですね。
平野:
そうですね。
角川:
現場のエンジニアとして最初に考慮したのは、Bizsparkを使う上で極力運用レスな仕組みにしたかったので、落ちてもいいようなシステムをまず創るところからスタートしました。
府川:
運用に手間がかかっていてはビジネスサイドの話がしづらいんですよ。
今回はシードのスタートアップでローンチ前からジョインできたので、こういう動きをとることができました。
ローンチして既にあるものを大変だから面倒みてくれといわれちゃうとどうしても運用サイドの話が中心になりがちですね。
平野:
確かに。サービスの初期構築から入っていただいているのが大きいですね。
府川:
インフラを構築するところから我々が入っていれば、運用に時間がとられないようにすることができますね。
角川:
例えば、VM が1台や2台落ちようとサービスが止まることはなくて、次の日に直すぐらいの感覚ですね。
増渕:
それはエミュータブルな感じですね。サーバーは新しくなったほうがいいよねという(笑)
機械学習の活用について
— Cognitive Servicesを積極的に活用していきたいという意向のようですが、具体的にどのように活用される予定ですか?
平野:
まず大前提として、OurPhotoはユーザーとフォトグラファーのマッチングだけではなく、プラットフォームとしていかに大きくしていくかということがテーマなんです。
その取り組みの中に、マッチングの精度があったり、フォトグラファーの写真の満足度をいかにあげるのかとか、またそこを教育にフィードバックしたりなどして、ユーザーとフォトグラファーとのサイクルをどんどん活性化していきたいと考えています。
そのためにはまずOurPhotoのコアの商品である写真データを解析する必要があると考えています。
例えば、マッチング精度については、ユーザーがどんな写真を望んでいて、それに対しフォトグラファーはどんな写真を持っているのか、その写真に含まれた要素を指標としてスコアリングし、可視化できるのではないかと考えています。
プラットフォーマーとしては、こんな写真がとれますよという写真側からの提案もしたいと思っています。
この褪せた色のアーティスティックな写真を撮っている人はこのフォトグラファーですとか、そのフォトグラファーと同じ傾向の写真を撮っているのはこのフォトグラファーです、という風に提案できると思っています。
シーンによってもフォトグラファーによって得手不得手というのがあって、例えば七五三が得意という人もいれば、桜を背景にいれたスナップのような写真を撮るのが上手いという人もいます。他には、自宅の中といった光が少ない場所で撮影するのが得意なフォトグラファーもいるんですが、今はそういうことがユーザーに効果的に訴求できていないのでこれから訴求していく仕組みを創っていきたいですね。
— 現状はどの程度進んでいますか?
角川:
すでにテストデータを利用して、Cognitive Services のVISION APIから返ってきたデータを蓄積している段階です。蓄積するにもそのデータを活用しやすくするために、格納の形式を色々と試行錯誤しながら進めています。
— 写真データの中にたくさんのメタデータが含まれているような状態ですか?
角川:
そうですね。そのように理解していただいてOKです。
増渕:
ひとつ提案として、フォトグラファーがあるシーンにおいて自分の作品の中から自分がよくとれたと思うものを5点なり10点なりあげてもらって、それを解析した方が(ラベルづけをフォトグラファーがやっているので)精度が良さそうな感じがしますね。
例えば、あるシーンの撮影に自信があるフォトグラファーが自分の作品をアップして、その写真の傾向を分析すると、同じようなシーンの案件が来た時にはその人に誘導するみたいな仕組みが創れそうですね。
前回、ウチでOurPhotoを利用したときに感じたのですが、「イベント写真を撮って欲しいのでイベントの写真を得意な人をお願いします」となった時に「OurPhotoさんってイベントで使ったことないけど、イベントの主旨にちゃんと合わせてくれるかな?」という不安があるんですよ。撮影のスキルが高いと言ってもイベントなのでロゴを入れて欲しいなどの特殊なニーズがあるんですよね。スピーカーと登壇者とゲストスピーカーが居たら4人のバランスで写真をとってほしいとか、このシーンでは誰か一人にフィーチャーして欲しいとか、ブースでのお客様との盛り上がりのシーンをとってほしいとか、商品の展示風景をとってほしいとか。
そういうのってITの催事をやったことがある人だと説明しなくてもわかるので。
展示の写真をたくさんとっている人だったら、展示の写真をプロフィールページなどにたくさんあげてもらえると、”この人だったら安心して発注できるな”って利用者の立場から思ったんですよ。
不安材料がある時に「大丈夫です」って言ってもらっても不安は消えないですけど、作品を見せてもらえれば安心して依頼することができますからね。
平野:
確かに依頼側のニーズに合わせて、表示される写真が変わったりするとより依頼しやすくなりそうですね。その機能は実現したいですね。
増渕:
Cognitive Servicesが上手くハマる使い方として、素人ではできないけど専門家ならこの写真の仕分けができるというような作業があるとした場合に、その作業をAIに真似させることは可能だと思うんですよ。ですが、誰もやったことがないことを仮説だけでAIにやらせようとすると、その仕分けの特長を捉えられなかったりして意外と失敗したりします。
特定のシーンに対してフォトグラファー自身の暗黙知があるとしたら、それを登録していただいて学習させることで「海」や「イベント」などラベル化していくことが可能になると思います。
平野:
それはいいですね。
OurPhotoを運営して行く中で、ここにニーズがあるなというシーンがわかったら、それを今度はフォトグラファーの学習に活かすこともしたいんですよ。
このシーンだとこういう写真をちゃんと抑えるといったパターンを可視化することで、フォトグラファーへの教育というところにもつなげることができると考えています。
また、あるシーンの撮影を終えた際に、撮影した写真を解析して機械的にチェックした結果をフィードバックすることでスキルの向上といったところにもつなげていけますね。
機械学習でできることが増えた分、何を優先させるべきかという議論はありますが、
売上に直結させることができるような機能の実装もわりと早い段階でリリースできそうですね。
角川:
そうですね。すでに写真を解析し数値化することは始めているので、蓄積されたデータをどのように利用しやすい状態に持っていくかということに取り組んでいます。
平野:
アプリ側では、分析されたデータをどのようにアウトプットをするかを検討中しています。
それが決まったら、あらためて角川さんの出番ですね。
よろしくお願いします。(笑)
府川:
早々に次のステップに行けそうですね。
自分からもよろしくお願いします(笑)
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