ASPカートシステムをグロースハックする
こんにちは、NHNテコラス株式会社の柏木と言います。
投稿時点でまだ一回しか飲んだことのない本ブログのディレクターである松本氏から「書かない?」と人づてに来たので「良いよ」な軽い感じで書くことになりました。脈絡があまり無い気もしますが気にしていません。また「良いよ」と言ってから原稿を仕上げるまで2ヶ月弱かかってしまったのは一方的に良い思い出です。
私は、2015年8月に転籍にてNHNテコラスに合流しました。それまではNHN PlayArtにてゲームプラットフォームの企画を担当しており、EC事業経験年数は極めて短い人材です。そんな私がCARTSTARというASPカートシステム(ネットショップ構築)を、気がつけばプロジェクトマネージャーという立場で転籍半年後にリリースしてしました。
今回のエントリーでは、2015年8月の合流から半年位でCARTSTARとしてリリースするまでの軌跡を、自分の振り返りの意味も含めてまとめてみました。
その前編となります。
プロジェクトに合流とグロースハックを意識
CARTSTARプロジェクトは、そもそもそんな名前のものはなく当初はCARTSTARの前システム(コレカゴplus)の機能追加プロジェクトと言う位置づけでした。プロジェクトメンバーはEC経験値も情熱も高いのですが、開発に近すぎたためマーケティング視点が弱くプロダクトとしての全体像がぼんやりしていました。そこで私はまず「現状の課題を洗い出し整理、そして方向性を提案する」ことから始めました。
同時に「グロースハック」を意識しました。「グロースハック」については「いちばんやさしいグロースハックの教本 人気講師が教える急成長マーケティング戦略」によると
- 「製品開発とマーケティングを横断して行う」
- 「プロダクトの中に成長の仕組みを組み込む」
- 「ユーザーの行動をもとに意思決定をする」
これなら、製品開発部分を補ってくれる人が入れば私でも十分に役に立てる。と密かに思っていました。実際に開発部分は既存のメンバー中心に回しております。
なお上記の書籍は本エントリーを書くために、改めてグロースハックについて整理するために読んだ本です。そのため出版時期とグロースハックを意識していた時期が時系列的に前後しておりますが気にしないでください。
【ミッション1】ASPカート市場を理解する
そもそもASPネットショップ構築システムについて詳しくないので、まずASPカート市場はなんぞや?という極めて初歩的かつ素朴な疑問を解決するために
- 自社製品と他社ASPカートの比較
- 疑問点を洗い出し周辺の人に確認
- 上記をまとめたものを、ECコンサルタントの方に確認
などを行いました。
2015年の8月中旬位の時点でなんとなく理解した事は以下
- どの会社のASPカートの市場へのメッセージは「機能」と「実績」が中心。
- どの会社のASPカートも機能的な大きな差異はない。機能の同質化がかなりのレベルで進んでいる。
- ネットショップ市場は成熟しはじめており、ネットで本店(自社のECサイト)を出したい店舗様は独自性を出したい。ただし独自性はデザインが中心(かも)。
- 「かんたんに!」と言う事が結構重要(らしい)。
【ミッション2】マーケティングテーマを決める
他の会社と同様に機能重視での戦い事は難しいと即判断しました。新機能で勝負しても他社も直ぐに追いつきます。また競合としている他社はNHNテコラスより何年も前から開発をスタートしており、機能の充実度(≒機能数)では中々追いつくのは難しいからです。そこで私は「機能至上主義からの脱却」をまずマーケティングテーマの1つとしました。
それ以外にも幾つか軸はあります。例えばサービス名称をSTARシリーズに統合しコマース事業製品の一体感を出す。支援メニューを充実させる。価格を戦略的に設定する。など、ただし話が拡散&深すぎるため今回のエントリーでは省略させて頂きます。
また念のためですが、CARTSTARには現在のECには必要不可欠なレベルの機能、例えばamazon ログイン&ペイメントなどはきちんと実装しております。
【ミッション3】戦い方を決める
製品開発にとって重要(そうな)事と、マーケティングテーマをザックリと決めたので次はどのように両者をバランスよく横断させ、なおかつ「成長の仕組みを組み込む」ことができるのか?を考えました。もちろん仮設検証が高速で回せるようにデータを取れることが重要です。
まだ答えが見つかっていない頃の図
上記「グロースハック」の部分の答えを出すために、紙(方眼紙)と消えるペンで一人ブレストしたり、マインドマップを使ったり、思いついたことを、関係者を見つけては自分の言葉にして喋ることを繰り返し1つの答えを出しました。正確には答えを出す3つの骨子とそれらを繋げる流れを思いつきました。
【骨子1】一番重要なのは「売れる」事
「売れる」と言うことはどういうことか?を突き詰めた結果、買い物をしている人の「行動」や「気持ち」がわかれば「売れる」本質に近づけるのではないか?
つまりBtoBの先の BtoBtoCの「C」を理解すれば良いのではないか?
それなら私の転籍前までの経験や知識も活かせる(と思う)。なおかつゲーム事業などのBtoCのエンタメ系に強い人材がそろっているNHN グループとしての強みも活かせるだろう。
【骨子2】消費者を研究する「おかいもの研究室」
上記の骨子の次に構想したのは消費者を研究する「おかいもの研究室」というのを作りました。意図は分かりやすい名前を作ることで社内への意識改革を進めるためです。BtoBからBtoBtoCへの意識改革は、簡単ではないと思ったからです。
また「おかいもの研究室」は消費者を客観的に見る必要があるので、CARTSTARとは一定の距離を置くことも重要、そのために明快で強い意志がある名前が必要と考えたからです。
当時は部活的な取組でした。社内に上手く浸透して実際のサービスとしての価値も整理できたら社外にも展開しようと言う企みも、私やこの部活に賛同してくれたスタッフとはよく話しておりました。
(結果としては上手く機能しはじめたので、CARTSTARリリースと同時に社外にも名称を出しております。)
【骨子3】激しく変化する消費者行動に対応する仕掛け
「激しく変化する消費者行動」に対応できるようにするため、プロダクトに成長の仕組みをもたる事が重要。ただし、成長を機能強化の軸ではなく、消費者が実際に使うネットショップでの購買体験をプロダクトに反映させることに細心の注意を払うことにしました。
成長の仕掛けはシンプルです。
「テンプレートの数をむやみに増やさない。 」
最終的には5〜10個程度の予定です。
まとめると以下のような図になります。
CARTSTARのグロースハックのプロセス概要(テンプレート開発)の図
円で囲った部分がグロースハック部分です。
まずは消費者を徹底的に知り、消費者行動を元にテンプレート開発を進めます。
完成したテンプレートは、定期的に「おかいもの研究室」での消費者行動調査を実施します。導入店舗様のサイトの研究を行うのです。さらに協力店舗さまにはアクセス解析レポートを見せて頂き検証の精度を上げていきます。
既に導入している店舗様にも進化したテンプレートを簡単に適応(バージョンアップ)できるようにする予定です。進化する事を約束するテンプレートということです。
補足ですが、「おかいもの研究室」の研究成果はテンプレート以外にも決済ステップの改善にも活用しています。5月リリース予定
戦い方は決まりました。リリース日は2016年の1月中と決めました。
なぜなら2月は店舗様の閑散期で最も話を聞いてくれるタイミングだからです。
逆に早くても駄目です。11月〜12月は年末商戦で店舗様は忙しいからです。
方針決定からリリースまで期限は5ヶ月です。
なお上記の事が全部、想定通りに市場にハマれば2年後の2017年末くらいには市場を制覇している予定になります。
次回はプロダクトを作っている過程についてのエントリーを書こうと思います。
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