RでIntCal13を使うー水月湖の奇跡

Data Science

2017.6.14

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教科書に載る湖

福井県の若狭湾に水月湖という湖が有ります。三方五湖の一つといえば、ピンと来るでしょうか。その水月湖が、2016年から中学校の理科、社会、数学、国語の教科書に掲載されるようになったのをご存知でしょうか? 私の周辺ではあまり知っている者が居ませんでしたが、ある業界では世界でもっとも有名な場所なのです。
 
どの業界なのか、そして何故有名になったかを説明するため、ちょっと横道に逸れるのをお許しください。

古い歴史の年代をどうやって知るか

恐竜が絶滅したのは6,600万年前だと言われています。人類が誕生したのは20万年前で当分は限られた地域に生息していたが、5万年前くらいになると地球上に広く拡散しました。
タイムマシンを持っていない我々は、有史以前の出来事の年代をどうやって知るのでしょう?

広く使われているのは「炭素14の半減期」を用いる方法です。炭素は我々の周りにあふれている、ありふれた原子ですが厳密には3種類に分類されます。炭素12、炭素13、炭素14です。数字は質量を示していて、このうち炭素14は放射能をもっています。
放射能をもっている原子は徐々に減少する性質があり、炭素14の場合は5,730年で半分になります。1/16になっていれば、5,730年×4=22,920年前ということです。例えば恐竜の化石、人類の誕生の痕跡などから炭素14の量を測定すれば何年前かがわかるのです。

しかし、この方法は万能ではないことがわかってしまいました。大気中の二酸化炭素の濃度が、時代によって大きく違うため、炭素14の半減期を用いる方法には無視できない誤差があるのです。

別の方法を模索

誤差をなんとかしたい。科学者がそう考え始めたのは今から半世紀ほど前です。炭素14を用いた方法は使いやすいので、誤差さえ補正することができれば・・・。

誤差を補正するアプローチとして検討されたのが「キャリブレーション」という方法です。
炭素を含む古い物質が発見された際、その物質がいつごろのものであるかを別の方法で年代を把握するのです。そうすれば○○年前の炭素14の量はこれくらい、という尺度がわかります。その尺度をたくさん積み上げれば、炭素14法の誤差は補正できます。
 
「別の方法」として年輪やサンゴを用いることが検討されましたが、決定打にはなりませんでした。
そこで着目されたのが湖です。湖の底には堆積物があります。毎年少しずつ堆積しているのでそれが層のようになります。1年に1枚作られる薄い層を横から見ると縞模様になります。これを「年縞」と言います。理想的な年縞があれば、キャリブレーションは実現できる!
 
ところが、これが簡単ではないのです。世界中に湖はたくさんありますが、理想的な年縞を得るためには厳しい条件を満たす必要が有り、殆どは当てはまりません。そんな中、奇跡的に全ての条件を満たす湖がみつかりました。それが水月湖です。

水月湖にまつわる苦労

初めて水月湖の年縞に着目されたのは1993年。数々の苦労を踏まえて成果が世に認められたのが2012年。その間の苦労は、以下の2冊の本に詳しいです。
 
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか
時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち
 
2012年にINTCAL(放射性炭素年代キャリブレーションの国際プロジェクト)の最新版IntCal13で水月湖のデータが採択され、一夜にしてLake Suigetsuは世界的に有名な地となりました。
その苦労に感謝し、それが母国であることに誇りを感じつつ、データを活用してみましょう。
 

RでIntCal13を使う

install.packages(‘Bchron’)
library(Bchron)
ages1 <-BchronCalibrate(ages=1000, ageSds=10, calCurves=‘intcal13’)

炭素14の含有量から1000±10年前と推測されたケースで、IntCal13を用いたキャリブレーションを行うとどうなるかという処理を行いました。

summary(ages1)
95% Highest density regions for Date1
$77.7%
[1] 922 930

離散値なのでピッタリ95%の信頼区間は出せず、最も近いのが77.7%区間で922年~930年、と言う推定になりました。
図示すると以下のようになります。

plot(age0)

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