【AWS Summit Tokyo 2018】[パネルディスカッション] CxOが語る SaaSビジネスの真髄 レポート
AWS Summit Tokyo 2018 で5月30日に行われた「[パネルディスカッション] CxOが語る SaaSビジネスの真髄」のレポートです。
ウイングアーク1st株式会社 取締役 副社長 COO 田中 潤
サイボウズ株式会社 執行役員 グローバル開発本部長 兼 サイボウズ・ラボ株式会社 代表取締役社長 佐藤 鉄平
スーパーストリーム株式会社 取締役 企画開発本部長 山田 誠
現在、多くの SaaS が AWS 上で稼働しております。 AWS を活用した SaaS ビジネスを展開する上でのポイントや、成功の秘訣とはどのようなものなのでしょうか。本セッションでは、パネルディスカッション形式で SaaS 事業者の経営層の方にビジネス視点で SaaS ビジネスの成功の真髄を本音で語って頂きます。
「パッケージソフトでサービスを展開しているがSaaSでの展開も行いたい」
「新しくSaaSのサービスを立ち上げたい」
といった担当者には必見の内容です。
SaaSビジネスをはじめたきっかけ
田中さん Salesforceから出資を受けた際に、BI機能としてMotionBoardを搭載することになった。SalesforceがHerokuを買収したタイミングだったので、Heroku上でサービス展開をしてほしいと要望をもらったが、検討した結果AWSを採用。SaaS化は2009年くらいから検討していたが、パッケージが順調でなかなか踏み切れなかった。
山田さん 2011年くらいからAWSと関わりがある。お客様のAWSへの関心が高く、稼働保証をしていない段階でAWS上で稼働をはじめたお客様が出始めて、SaaS化に踏み切った。
佐藤さん 創業してから10年ほど経過して、次のチャレンジが必要となり、その一つの柱がSaaS化。2011年にcybozu.comをつくり、アプリケーションをクラウド化し、Kintoneをつくった。
一昨年の時点でSaaSがパッケージの売上を抜いた。
SaaSの難しさとは?
山田さん 前提として、既存のアプリケーションを変えずに展開したかった。また一社ごとにプライベートクラウドでつくると、管理が負担となるため、マルチテナントで動かせるアプリケーションを目指した。
パッケージとSaaSの違いとしては24/365の運用やセキュリティの部分が難しかった。パッチを当てるためにサービスを一時停止したり、バージョンアップは困るとお客様にいわれたり。事前にちゃんと告知をメールでしているがなかなか周知できないことが現在も課題として残っている。
佐藤さん クラウドの利点は自分たちで構成やバージョンをコントロールできるところ。マルチテナント、シングルバージョンで展開するとサポートがシンプルになる。開発、品質保証の部分ではメリットを感じている。ただ運用の部分は2011年にサービスを展開するまでは自分たちではやっていなかったので、そこの苦労はあったがお客様に提供できる価値となる部分なので取り組みには力を入れている。
田中さん アプリケーションをそのままでは展開できないのが一番の難点。SaaS向けの開発をする投資ができるか。開発したあとは運用などに対してパッケージとの二重投資が必要なので、その経営ジャッジができるかどうかが大切。
山田さん 販売パートナーとの関係も難しい。SaaSで展開をするとパートナーの売上がさがるから提供しないでほしいと始めは怒られた。解決策として、パートナーのデータセンターにのせてくださいというアプローチでSaaSを活用した。数が集まらないとSaaSはまわらない。
SaaSで展開することで、クラウド専門のパートナーと新しくつながった。SaaSとパッケージではお客様の層も違う。大手のお客様は取り扱うデータ量も多いからパッケージで自前で構築するケースが多い。中堅で遠隔地のお客様はクラウドを好まれる。海外やグローバルではSaaSオンリーでやっている、輸出や法律の観点で。むかしはデモをしにいく必要があったりしてできなかったことができるようになった。グローバル・ビジネスはSaaSと相性がよい。
田中さん SaaSを展開し始めた当時は、パッケージを売ったほうが利益がでるため、パッケージの販売に注力をしていた。
パートナーへの展開としては、始めに当社でビジネスをつくり、事例や使い方を確立してから、パートナーへ展開してビジネスをスケールさせた。パッケージでは大手のSIのパートナーが多かったが、SaaSをはじめてから中堅のお客様、パートナーも増えてきて、関係が広がった。
オーストラリアではローカライズしたクラウドサービスを構築して提供することができた。時差があると少し対応が大変なため、現状は時差が少ない地域での展開に注力をしている。
佐藤さん 従来のオンプレミスのパッケージも売上は減っていない。パッケージは横ばいでクラウドが増えて逆転した。パッケージを続けるパートナーは続けてもらっている。SaaSでAPIを提供することで、お客様の業務を一緒に改善しましょうという動きをする新たなパートナーとのつきあいが増えた。
サイボウズ Officeを提供し始めて20年たつので、国内のお客様には行き渡ったと思っていたが、SaaSで提供することで利用し始めたお客様もおり、パッケージでは届かないお客様がいることを知った。
AWSを選んだ理由
佐藤さん USへの展開にむけてフォーカスしたから。自社で構築しているクラウドは、AWSが日本でのリージョン展開を始める前に構築している。そのため現状はAWSにはまだサービスは移せておらず検証段階にある。
AWSとGCPで比較した結果、GCPはコンシューマーからでてきたので技術的な性質が違うと感じた。AWSのほうがマネージド・サービスが充実しており、ビジネスで活用する際に開発スピードをあげられるというメリットがあった。例えばエンタープライズでの対応、アクセス権の設定や企業向けサポート、コンプライアンス要件の支援など。またパートナーやユーザー会も充実している。
AWSでのサービス開発はアプリケーションエンジニアとインフラエンジニアでチームを組んでいる。アプリケーションエンジニアはコードでサーバーを管理できるところに面白さを感じているようだ。スピードやグローバルでの展開を考えるとAWSで挑戦したい。
山田さん AWSがシンプルに全く問題なく動いたから。
細かい部分でAWS以外のクラウドでは
– セッションタイムが数分で切れる→バッチ処理などの関係で困る
– JSTの日本日付への対応を自分で設定しないといけない
など。AWSは既存のサービスに手をいれる必要が少なかったため選んだ。
結果として、AWSはもう文化になっている。AWSはエンジニアを大切にする会社。当社はソフトウェアの会社なので、ハードウェアに興味がない。2週間だけサーバーがつかえないっていうのに対して、挑戦ができなかった。それが挑戦できるようになって気づきを与えてくれた。
田中さん AWS Marketplaceの第一号のアプリケーションがMotionBoard。エンタープライズのお客様がほとんどで、クラウドを使いたいという要望もなかったので、一つの選択肢としてAWSを考えていた。しかしAWSが異様なスピードで新しい機能を次々提供してくれたので、自社のエンジニアのモチベーションがあがった。
ただAWSがすべてなんでもできると思い込みすぎないほうがよい。便利な機能をつかえばつかうほど、コストがかかる。技術者がつかいたい便利なものと本当に必要なものの見極めは必要。本当に必要なものが選定できる仕組みづくりが必要。なんでもつかうのではなく、適切につかってもらいたい。
以上、「[パネルディスカッション] CxOが語る SaaSビジネスの真髄」のレポートでした。
パッケージでアプリケーションを利用する層とSaaSで利用する層が違うというお話はとても興味深かったです。
AWSにすることでアプリケーションエンジニアのモチベーションが向上したのは3社とも共通しているようです。
SaaSとしてサービスを展開することのメリット・デメリットがよくわかり、各社がいままでどう対応をして乗り越えてきたかがよくわかる非常に有意義なセッションでした。
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Follow @twitterども、マーケティングチームのマネージャーです。 主にイベント系の記事やマーケティングについて書いています。たまにAWS系のイベントに出没します。
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