[AWS Summit Onlineレポート]自治体でのクラウドバイデフォルトの実現 – クラウドAIを活用した内部事務の効率化 #AWSSummit
2020年9月8日から9月30日にオンラインで開催されているAWS Summit Onlineのセッション「CUS-11:自治体でのクラウドバイデフォルトの実現-広島県、北九州市からの今後の展望について」のレポートです。
このセッションは北九州市と広島県の事例の2部構成となっていて、各自治体がクラウドをどのように導入し、活用しているのかを紹介しています。この記事では北九州市の事例をレポートしています。
セッション概要
タイトル
CUS-11:自治体でのクラウドバイデフォルトの実現-広島県、北九州市からの今後の展望について
スピーカー
北九州市 総務局情報政策部情報政策課
情報政策担当係長 高尾 芳彦 氏
概要
日本政府によるクラウドバイデフォルトが急速に進む中で、自治体情報システムにおいてもクラウドを活用した生産性の向上、コストの最適化、セキュリティの強化等への取り組みが不可欠になってきています。 また様々な状況下でも迅速に対応する自治体業務が求められており、デジタル化推進の為にはクラウドの活用が前提と言えます。今回具体的な AWS 活用事例として、広島県よりクラウドを活用したデジタルファースト戦略を、北九州市からは行政効率化に向けた AI の取り組みをご紹介頂きます。
出典:CUS-11:自治体でのクラウドバイデフォルトの実現-広島県、北九州市からの今後の展望について
レポート
事務改善についての検討
現状
- 国・県・庁内部署等からの通達文書、事務連絡文書等の収受・保管作業が煩雑、、
- 媒体別に文書を収受し、文書目録を文書管理システムに登録
- 電子文書は文書管理システムやファイルサーバなどに電子的保管
- 紙文書はパイプ式ファイルにファイリング
- 文書の保存期限経過後に削除、廃棄
- 通達文書・事務連絡文書等を各職員へ配布・供覧する作業も煩雑、、
- 文書管理システムの供覧機能を使用
- 電子メールでの転送
- 共有フォルダの参照
- 紙文書を回覧
課題
- 古い通達文書・事務連絡文書等を探し出すのに時間がかかる!
- 特に総務部門の庶務担当者の負担が大きい!
- 通達文書等のデジタルコレクションサイトとして、「文書閲覧システム」の開発を検討
- 2017年オンプレミスでのフルスクラッチ開発を提案
→職員提案制度にて優秀賞! - 2018年に開発に乗り出そう!
→しかし!予算がつかず、、、、
→紙媒体からの脱却を図る「自治体DX」には遠い道のりだと痛感、、、
- 2017年オンプレミスでのフルスクラッチ開発を提案
クラウドの活用検討
- クラウド活用の検討
- 多くの民間企業でクラウド利用が進んでる理由は?
- 早期にアジャイル的に開発を進める「攻めのIT」は?
- コスト削減を目的とした「守りのIT」は?
- マネージドサービスやサーバーレスアーキテクチャの採用でシステム運用職員の業務軽減できる?
- クラウド・バイ・デフォルト原則に対応できるクラウド利用方式はなに?
(株)日立製作所との共同実証実験
- 2018年 (株)日立製作所が「地域IoT連携クラウドサービス」を提供開始
- 市庁内外のデータを情報セキュリティを保ちながらクラウドと連携させる機能
→文書事務改善を目的としたシステム開発計画を伝えると、日立製作所側から「クラウド上で実証実験をやりませんか?」との提案が!
2019年2月〜3月 実証実験
- 行政文書目録公開システム
- AWS VPCのパブリックサブネットに構築
- 既設の文書管理システムから抽出した行政文書目録データをインターネットから検索できる
- 情報公開に対する市民サービス向上を目指すコンテンツ
- 通達文書閲覧システム
- AWS VPCのプライベートサブネットに構築
- 市庁内の端末からAWSへ「地域IoT連携クラウドサービス」を介して、PDF文書を登録
- 市庁内の端末から職員が通達文書を検索、閲覧ができる
→2ヶ月の短期間にも関わらずある程度の環境構築と稼動確認ができた
→市庁内ネットワークとAWS間は情報セキュリティを保ちながらクラウドが利用できることが確認できた
→クラウド上でのデプロイメントのはやさに驚いた!!
クラウドAI活用を目的とした実証実験
2019年6月〜 実証実験
- 2019年2月~3月の実証実験で構築した「通達文書閲覧システム」をブラッシュアップして本格運用に持っていきたい
- クラウドのAIサービスを利用し、事務作業効率をUPしたい
- 他自治体との共同利用化を実現したい
→2019年3月 北九州市・下関市・日立製作所で「AIによる自治体業務総合支援実証事業」を立ち上げる
→2019年6月 総務省の「革新的ビッグデータ処理技術導入推進事業」のAI活用実証グループに採択
事業内容
- 文書検索・閲覧システムにAI機能を搭載
- あいまい検索、おすすめ検索機能を搭載
- AIチャットボットを利用した庁内FAQシステムの立ち上げ
- 音声認識、ビデオ解析による、議事録書き起こしツールの構築
実証システム構成
- 実証実験時と同様
- 庁内ネットワークとAWSを「地域IoT連携クラウドサービス」を介して専用線接続
- VPCのプライベートサブネット内に、文書検索・閲覧システムとAIチャットボットを立ち上げ
- 議事録書き起こしツールは別クラウドのSaaSを利用
実証結果
- 文書検索・閲覧システム
- 作業時間が約70%削減
- 電子的一元化によりペーパーレスが見込まれる
- AIチャットボット
- 電話応対時間の約40%の軽減。問い合わせ件数が減少
- 推論エンジン搭載のチャットボットのため、Q&Aのメンテナンスが容易で運用しやすい
- 議事録書き起こしツール
- 録音状態にもよるが、追加学習機能や辞書登録機能でテキスト変換精度が約7割強と高い結果が得られた
- 書き起こし作業時間が以前の平均70分から平均30分に短縮
今後の展開
- 2020年10月からの本格導入に向けて調整を進めている
- システム評価、クラウドの安全性評価、支払い方法などの課題整理を行う
- 興味のある自治体があれば共同利用のサポートをします!
- クラウド利用は情報セキュリティが確保されているのか?や、これまでのレガシーシステム構築とは異なる手法での開発など、先例がなく不安な方が多いのでは?
- どのようにクラウドを利用するかでコストに大きな差が出てくるので、試運転を重ねて最適化をしていく必要がある
- クラウドはオンプレミスとは違い、一定期間だけ利用してみることができるのもメリット
- AWSと日立製作所の「地域IoT連携クラウドサービス」はシステム運用の安全性とデータプライバシーが十分に確保されていた
- AWSは多くのクラウドサービスと課金内容がオープンにされていて、利用方法に適した設計予測が立てやすいこともメリット
- 地方自治体のみなさまがクラウド利用を検討する場合のデザインパターンとして参考にしてほしい
まとめ・感想
自治体の煩雑な文書管理の問題をAWSとAIをうまく活用しながら解決した事例でした。
自治体は一般企業よりも紙文化が根強く、クラウドへの理解を得るのも難しい環境です。そんな中で実証実験を繰り返しながら少しずつ実績を作っていったことが本格導入まで進めたポイントだと思いました。
同様の問題を抱えている自治体は多いと思うので、参考してクラウド利用を検討してほしいなと思います。
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