【AWS Summit Japan 2022】メインフレームからのクラウド移行事例と最新アップデート(AWS-02)
こんにちは。マーケティングチームの中川です。
2022年5月25日から26日まで開催されている AWS Summit Online で「メインフレームからのクラウド移行事例と最新アップデート」というセッションを聞きましたので、レポートします。
セッション概要
タイトル
メインフレームからのクラウド移行事例と最新アップデート(AWS-02)
スピーカー
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
マイグレーション&モダナイゼーション事業開発本部
シニアマイグレーションスペシャリスト
清水 大紀
概要
変化の激しいデジタル変革が進む中、企業が生き残っていくためには、自社のデジタル変革を支える ITシステムが必要です。 本セッションでは、クラウドへの移行を通じて、デジタル変革を行うお客様が増えてきたメインフレームを取り上げます。デジタル変革を行う際のメインフレームの課題は何か、メインフレームからクラウドにどうやって移行していくべきなのか、AWS の移行事例と最新情報を踏まえながらご説明します。
レポート
想定視聴者
- メインフレームの課題解決の検討をこれから行う予定の方
- メインフレームの将来計画を検討して、まだ日が浅い方
- メインフレームモダナイゼーションが思ったように進まない方
アジェンダ
- 国内メインフレームの課題
- メインフレームの課題に対する解決策
- メインフレームの移行方式
- 移行事例
- メインフレームからクラウドへの移行に関する最新アップデート
- Micro Focus
- Blu Age
- メインフレームからクラウドへの移行をご支援するパートナー
- 大規模クラウド移行のご支援プログラム
- まとめ
国内メインフレームにおける課題
- 人的資源の問題:経験豊富な技術者を確保しつづける事が難しい
- 日本のメインフレーム市場は、富士通・日立・IBM・NECの4社で構成されている
- それぞれのメインフレームテクノロジーはベンダーごとにアーキテクチャが大きく異なるため、それぞれのベンダーごとに技術者を育成しなければならない
- メインフレームのプログラムは、1990年前後に開発されており、当時使われていたプログラム言語であるCOBOLやPL/I、PRGなど
- 30年という時間の経過で、今後5~10年にわたり第一線で働き続ける技術者を確保することが困難に
- 若手技術者への技術継承しようとする取り組みもあるが、JavaやWebテクノロジーが台頭している状況を踏まえると、簡単ではない
- 上記の状況はグローバル規模でも起こっているため、オフショアでも難しい
- コストの問題:メインフレームの維持費用が高い、値上げなどにより新しい取り組みに投資するための予算を圧迫している
- 2022年2月、国内メインフレーム市場の最大手の富士通がメインフレームからの撤退を決定
- 今から富士通のメインフレームに投資しても改修が困難
- 投資対効果を考え、IT予算を配分する上で避けては通れない経営上の問題
- 技術的な問題:アプリケーション規模が複雑で多岐にわたっているため、中身を理解し拡張するのが困難
- アプリケーションの中身をわかっている技術者がいなくなり、ブラックボックス化している
- アプリケーションを変更するには、膨大なソースコードを読むところからのスタートに
- そのため、スピーディーに機能拡張することが難しい
メインフレームの課題に対する解決策
- 機能分割・刷新(クラウド上で再構築)※本セッションで取り上げる内容
- メインフレームの処理や機能を分割して、個別に刷新してクラウド上で再構築するアプローチ
- 機能追加(クラウド上で機能を追加する)
- クラウドに移行してから機能追加を行っていくアプローチ
- Linux、Windowsなどそのままクラウド上に移行できるシステムでよく使われる
- しかし、メインフレームではクラウドで使われているアーキテクチャと大きく異るためそのままの移行は困難
- 機能縮小・廃棄
- 不要になったロジックを廃棄し、システム全体をスリム化することにより、維持するプログラム資産を減らす
- しかし、廃棄しなかったものがそのまま残りつづける
- 現状維持(塩漬け)
- 状況がより悪化する場合もあるため、推奨しない
- 課題が顕在化しているのであれば、早く着手を
メインフレームの移行方式
- メインフレームの移行方式
- リアーキテクチャ:モダンアプリケーションアーキテクチャへ
- リアーキテクチャ:移行Tool利用による、コンテナ化やサーバーレス化など
- リビルド:IaaSベース再構築 → PaaSおよびコンテナベースでの再構築
- 脱メインフレーム 機能・開発言語など(JCL、CICS、COBOL、PL/I などのモダナイズ)
- リパーチェス:パッケージやSaaSの活用
- リファクタリング:言語の書き換え
- 脱メインフレーム ハードウェア(部分 or 全部)
- リプラットフォーム:エミュレーションの利用
- リアーキテクチャ:モダンアプリケーションアーキテクチャへ
-
- 実際にやりたいのはリアークテクチャやリビルドでは?
- コンテナやサーバーレスなどの新しいテクノロジーの取り組み、業務に合わせたアプリケーションの刷新
- 価値創出を目指した移行方式
- 規模が大きいシステムは一足飛びに移行するのが難しい
- おすすめは、リプラットフォームやリパーチェス、リファクタリングなどを行った上で、最終的なゴールに向かうアプローチ
- 移行方式を検討する優先順位
- まずはリパーチェスを検討
- ERPやSaaSなどのサービスに移行し、過去のプログラム資産を継承する代わりに業務に合わせてサービスをカスタマイズする
- サービスの範囲内で業務を遂行できるできるのであれば、メンテナンスもしやすい
- 次にリプラットフォームを検討
- エミュレータを使って、過去のプログラムをそのままクラウド上で稼働させる
- プログラムの変更箇所を少なくして、移行リスクを最小限に
- 古いプログラム言語はそのまま残るため、技術者の確保が難しい場合は次のステップへの計画を立てる必要がある
- 3つ目の選択肢はリファクタリング
- プログラムを他の新しいプログラム言語へ書き換えする
- リプラットフォームに比べて変更点が多くなるので、移行リスクを抑えるために開発体制を整えることが必要
- まずはリパーチェスを検討
移行事例
- リパーチェスによる移行事例:AGC株式会社様
- メインフレーム上で稼働していたシステムをAWS上のSAPに刷新
- IoTなどの新しいテクノロジーに対応するには、オーダーメイドより標準化されたサービスの組み合わせの方が安全&早かったため
- リプラットフォームによる移行事例:オーストラリア小売り業 Kmart
- メインフレーム上のシステムをMicro Focusのエミュレータを使ってAWSクラウド上に移行
- 変更点が少なくリスクを抑えて1年3か月で移行完了
- リファクタリングによる移行事例:ネスレ日本株式会社
- AS/400上にRPGを使ってシステムを稼働させていた
- RPGをJavaに書き換えるツールを使い、1年で移行を実現
- 一部機能をEDIパッケージに移行するリパーチェスも実施
メインフレームからクラウドへの移行に関する最新アップデート
- AWS Mainframe Modernization(プレビュー)
- 2021年12月のre:Inventで発表
- Micro Focusによるリプラットフォームと、Blu Ageによるリファクタリングをマネージドサービスとして提供
- メインフレーム上で使われている言語、ミドルウェアに対応
- メインフレーム移行とクラウド移行がワンセットで行われるため、移行期間の短縮に
- MicroFocusによるリプラットフォーム(プレビュー)
- MicroFocus社が提供する分析ツールやEnterprise Developerなどの開発ツールを同梱
- 既存アプリケーションをリコンパイルし、Enterprise Serverのラインタイムを同梱した Amazon EC2 上でアプリケーション稼働が可能に
- Blu Ageによるリファクタリング(プレビュー準備中)
- 分析ツールや変換ツールを使って、既存のアプリケーションからJavaなどのコードを自動生成、Amazon EC2 のランタイム環境をデプロイする
メインフレームからクラウドへの移行を支援するパートナー
- 以下のようなお客様だけで実施することが難しいことは移行ベンダーの力を借りると良い
- メインフレーム上で動いているミドルウェアがクラウド上で動かない場合の代替探し
- 単体テスト、統合テスト、システムテストなど
大規模クラウド移行のご支援プログラム
- AWSでは大規模なクラウド移行を行うお客様を対象に、移行支援のパッケージを提供している
- メインフレームからクラウドに移行する場合にも活用することができる
まとめ
- メインフレームを使い続ける場合、技術者不足や維持費の高額化、拡張が難しいなどの課題がある
- メインフレーム上のシステムを機能ごとに分割し、リパーチェスやリプラットフォーム、リファクタリングなどの方式を使ったクラウド移行がよく行われている
感想
1990年が30年前ということに時の流れを感じつつ……古くて重要なシステムの移行ほどハードルが高いものはないだろうなと思います。
維持費の高額化や技術者不足などの問題はあれど、中々移行できないという課題を抱えられるているお客様も多いのではないでしょうか?
そういったお客様のために、AWSでも様々なサービス・ソリューションが用意されているので、ぜひこの機会にご検討いただければと思います。
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Follow @twitterマーケティングチーム所属のマーケター兼ディレクターです。AWS活用支援サービスである「C-Chorus」を中心にWebサイトの企画・運営を担当しています。趣味は読書とゴルフ(ベスト98)です。
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