ITとファッションの最先端を話そう FashionTech Talks Tokyo #1
5月13日、当社カフェスペースでFashionTech Talks Tokyo #1が開催されました。
本イベントは、Fashiontechのトレンドを追いかけるエンジニア同士を繋ぎ、イノベーションを加速させるための議論の場を作る事を目的としており、当社と株式会社ライフスタイルデザインが主催したものです。
当日は、ファッション業界を支える気鋭のエンジニアのみなさんが登壇し、IoTやDeep Learningといったトレンドの技術を用いた最先端の取り組みについて、具体的な事例を交えて講演を行いました。
EC専業だからこそ、お客様とのリアルな接点が必要
まず最初に登壇したのは、株式会社ライフスタイルデザイン システム開発部部長の中筋丈人氏。ポップアップストア(期間限定の店舗)を都内に展開し、実店舗でのIoT活用の試みをご紹介いただきました。
現在、カスタムオーダーのメンズファッションECサイト『La Fabric』を運営する同社ですが、オーダーメイドに欠かせない正確な採寸を顧客自身で行うことが困難であったり、生地の実物を見たいというニーズに合わせて、「お客様とのリアルな場での接点が必要」と考え、実店舗展開とIoTの活用を検討するようになったそうです。
SORACOM Air SIMとAWSを利用した構成
店舗で取得されたセンシングデータは「Re:dash」というオープンソースのダッシュボードツールで可視化しているとのこと。人感センサーの精度などの課題はあるものの、今後の出店計画やVMD(Visual Merchandising:売り場の陳列、POP設置等による訴求)に利用していきたいと展望を述べました。
ラーメンは「Ice cream」?Vision APIによる画像認識
続いて、株式会社エアークローゼット CTO 辻亮佑氏が登壇。
『Fashion×Vision API』というテーマでご講演いただきました。
Vision APIとは、Google Cloud Platformで提供されている機械学習の技術を利用した画像認識サービスで、画像に写っている物や人物を検知し、それに基づいたカテゴリ分けやタグ付けを行うことができます。
同氏は、洋服に限らず、様々な画像について、Vision APIによるタグ付けと色判定に挑戦しました。
たとえば、あの有名店のラーメンを認識させると…
一番下になぜか「Ice cream」というラベルが…?
とはいえ、精度はそれほど悪くないようです。
ワンピースの画像認識結果
洋服のカテゴリ分けやタグ付けに利用できるとしつつも、多数の画像を同時に処理できなかったり、認識精度が今ひとつのラベルもあり、引き続き検証を行う必要があるとのことでした。
「AIが先か、サービスが先か」 AI開発における体制と環境
3番目に登壇したのは、カラフル・ボード株式会社 CTO 武部雄一氏。創業5年目のスタートアップ企業である同社は、『SENSY』の開発に取り組み、現在はファッション領域におけるAI利用を推進しています。
AIの開発で、まず最初に議論となるのが「AIが先か、サービスが先か」という開発方針だといいます。つまり、AIの開発を主導とするのか、サービス(プロダクト)が求めるAI機能を開発するのかという問題ですが、スタートアップならではの柔軟性でどちらの方針にも対応、氏曰く「進め方の最適解なんて誰も知らない。ワイワイやればいい!」とのこと。
開発環境のインフラはAWSを選択。AWSのスタートアップ支援制度を利用することで、社内にAWSに詳しい人がいなくとも、手厚いサポートで最適なITインフラを構築できたと語ります。そして、将来的には、GCP(Google Cloud Platform)との併用も考慮に入れ、マルチクラウドを意識した「CLOUD戦略」を強調しました。
TensorFlowによるインテリアスタイル判別システムの開発
次に、Tunnel株式会社のCTO 平山知宏氏が登壇。同社が運営するインテリアの写真共有サービス『Room Clip』で投稿された写真から、その部屋のインテリアスタイルを判別する仕組み(インテリアスタイル判別器)を開発した事例をお話しいただきました。
開発のきっかけは、『Room Clip』上で話題となった”男前インテリア”という新しいスタイルの誕生だといいます。男前インテリアとは、ブルックリンスタイルに類似しつつも、日本独自のDIY文化が混じった雰囲気を持つ内装を指すのですが、なかなか素人には判別が難しいスタイルです。
スライド内写真:左がブルックリンスタイル、右が男前インテリア
同氏によれば、Deep Learningは、インテリアスタイルのような「定義があいまいだが、存在が認められている」、「モデル化が困難なもの」の識別に向いているとのこと。そこで、Deep LearningのひとつであるTensorFlowに、インテリア写真2万枚(1,000枚×20スタイル)を3日かけて学習させたところ、なんとか判別が可能になったといいます。
男前インテリアを識別できている
このような学習結果を、OSSとして大学や研究機関に提供していきたいと語り、Deep Learningの活用における専門家による支援の重要性を示唆しました。
オムニチャネル戦略を支えるクラウドサービス
最後の登壇者は、オーマイグラス株式会社 開発部 統括部長の西尾智春氏です。
眼鏡専門のECサイト『Oh My Glasses』を中心に運営している同社ですが、最初の登壇者である中筋氏が紹介した『La Fabric』と同様に、リアル店舗にも注力しているとのこと。同社はオムニチャネル戦略を掲げ、リアル店舗を、初回の顧客接点のための「セミショールーム型ストア」と位置づけ、ECサイトへの流入を促進するという手法を展開しています。
そこで重要となるのが、「店舗とECをつなげる仕組み」「店舗と本社のコミュニケーションをつなげる仕組み」「継続したサービス改善を支える開発」の3つです。実際に導入したクラウドサービスを紹介しつつ、今後は3Dシミュレーションを用いた仮想的な眼鏡試着サービスを開発してみたいと、意欲を語りました。
講演後は、楽しい懇親会!多くの方にご参加いただき、とても盛り上がりました。
ファッションテックは、今後ますます注目度が上がると考えられます。
Fashion Tech Talks はこれからも旬な企業、旬なテクノロジーを共有する場として開催を予定していますので、皆さんの参加をお待ちしております。
本イベントの発表スライドはこちらで公開中です。さて、文末となりますが、この記事で掲載されている人物の写真は、Our Photo株式会社の協力によりご提供いただきました。講演中の熱気が伝わる素晴らしい写真をありがとうございます。Our Photo株式会社が運営する『Our Photo』は、”撮りたい”プロまたはセミプロのフォトグラファーと、”撮ってほしい”人を繋ぐフォトグラファーマッチングサイトです。ご興味のある方は、こちらもチェックしてみてください。
それではまた!
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