はじめに
こんにちは。最近では、業務やコーディングの効率を上げるためにAIを活用されている方も多いのではないでしょうか。
AIツールの登場により開発効率が向上し、エンジニアはアーキテクチャ設計やユーザー体験向上の施策検討に集中できるようになりました。
そんな中で、特に注目を集めているのが
CursorというAI搭載のコードエディタです。
私の所属するデータ分析基盤開発チームではこのCursorを導入してから1か月ほどが経過したため、今回はCursorを実際に利用して良かった点や見えてきた課題などをチーム開発の視点でご紹介します。
Cursorとは
Cursorは、自然言語での指示によりコードの生成や修正・リファクタリングを自動化できる、AIを搭載した次世代のコードエディタです。
開発者向けのコーディング支援だけでなく、文章生成や調べものなど様々なシーンで活用できます。
CursorはGitリポジトリの中身をコンテキストとして解析し、プロジェクト構造やチーム固有の実装パターンを理解した上で最適なコードを生成します。
実際のCursor画面はどのようなものなのか見てみましょう。
上記の画面は実際のCursorの画面となっています。
①対象のGitリポジトリ
ここで表示されているのはコード修正を行いたいサンプルのGitリポジトリになります。
②Cursorによって修正されたファイルの中身
隣のブロック(③)で修正指示されたファイルの中身が表示されています。
③チャットによるコード生成の指示
Cursorではチャット形式でコード生成の指示を行うことが出来ます。
この例では、既存のコードにdocstringを追加する指示をしており、②で修正されていることが確認出来ます。
Cursorを導入した背景
私たちのチームでは、開発者によってスキルレベルが異なるため、アウトプットの品質が不安定になりがちでした。
また、コードが複雑になっていくことで、保守性が低下するという課題も抱えていました。
これにより、コードレビュアーが担う品質チェックの負担が増加し開発全体のボトルネックにも繋がっていたため、AIを活用したコーディングを検討していました。
結果的に、Gitリポジトリ内のファイルの構造やモジュールの関係性を理解した上でコードを生成できることがCursor採用の決め手となり、以下のような効果を期待して導入が決まりました。
- 生産性の向上: マージまでの時間短縮
- コードの品質の向上: 開発者のスキルレベルに関わらず一定水準以上のコード品質を確保
- レビュープロセスの効率化: レビュー負荷の軽減
Cursorの効果検証
私たちのチームでは2025年7月からCursorを導入し、以下の運用ルールを設けて1か月以上利用を続けています。
- 新規機能開発における初期コードの作成は原則としてCursorを活用する
- 初期コード生成後の開発プロセス(バグ修正、リファクタリング、ユニットテストの作成 etc…)においては、開発者の判断によりAI活用と手作業を並行して実施する柔軟な体制を取る
導入前後の開発パフォーマンス比較
Cursor導入前後でチーム内の開発パフォーマンスを比較したところ、1日のPR作成本数の増加が確認できました。
また、PR本数増加にも関わらずマージまでの平均日数は同水準を維持しており、コードレビューに負荷をかけることなく生産性の向上を実現できています。
| 評価項目 |
導入前 |
導入後 |
改善の程度 |
| PR作成本数 |
1.4本/日 |
2.0本/日 |
約40%向上 |
| PR作成~マージまでの平均日数 |
1.5日 |
1.4日 |
同水準を維持 |
Cursorがチームにもたらしたメリット
導入前に期待していた3つの要素(生産性の向上・コード品質の向上・レビュープロセスの効率化)に加えて、開発体験にも様々な効果が見られました。
1. 生産性の向上
開発中に不明点が出てきた際はWebベースの検索に頼ることなく、Cursor内で直接質問・指示が可能なので、作業の中断が減り集中力と作業継続性が向上しました。
Cursorでは以下のようなコード生成に対応しているため、初期コード作成から実装完了までの時間を大幅に短縮できるようになりました。
- 複雑な処理のリファクタリング
- 例外処理やユニットテストの自動生成
- linter対応
- docstringやコメントの自動生成
- 複数ファイルを跨いだコード生成
2. コード品質の向上
Cursorではコンテキストを活かしたモジュール単位でのコード設計が可能で、以下のようなフォルダ構造があった場合に各ファイル間の関係性を理解してコード生成を行います。
src/aggregation/
├── data_getter.py # 元になるデータの取得処理
├── transform.py # データ変換処理
└── main_aggregation.py # 変換済みデータの集計処理
Cursorのこの性質により、一貫した設計・命名ルールに基づいた高品質なコードが生成され、チーム全体でのコード品質の標準化が実現できています。
また、単一責任の原則に基づくクラス設計や類似パターンの統一に強みがあり、今まで手動で行っていたコードの品質や可読性の確認作業が楽になった実感があります。
3. レビュープロセスの効率化
コード品質の向上により、レビューで指摘されうるスペルミスなどのヒューマンエラーや可読性に関する指摘事項が減少したことで、レビュワーの負担軽減にも繋がりました。
実装者側にとっては、レビューで発生した軽微な指摘事項のコード改修もCursorによって即座に対応できるようになり、双方に良い効果がありました。
4. 開発体験の変化
上記の3つの要素以外にも、Cursorによって開発者の実装プロセスに様々な良い変化が見られました。
PR作成までの実装プロセスは、Cursor導入前後で以下のような変化がありました。

仕様を理解した上で正確な指示を行うために、設計の検討は導入前よりもしっかり行う必要が出てきましたが、「コードをどう書くか」の検討に時間を取られることが減り、コーディングと改修の負担が小さくなりました。
それ以外にも、以下のような良い効果がありました。
- ナレッジ支援:自動生成されるdocstring・コメントにより、新規メンバーのプロジェクト理解が向上
- 言語の壁を排除:外国籍の開発者も自分の母国語で自然に指示を出せるため、作業効率が向上
Cursor利用による課題
Cursorを導入したことで得られたメリットは大きかったのですが、一部で以下のような課題が見つかりました。
1. 技術的な制約
■品質に関する懸念
学習データの偏りにより、一部技術領域で不正確なコード提案が出ることがあり、最新のAPI仕様やIaC関連のドキュメントに記載のない要素が混入するケースも稀にありました。
また、指示が曖昧だと成果物の品質が大きくブレることもあります。
■コードの構文的問題
ネストが深すぎる冗長な例外処理などが自動生成される場合や、DRY原則が守られず複数個所に同じロジックを生成するようなケースも見られました。
ハルシネーションにより技術的に誤ったコードが生成される懸念があり、エラー修正時の自動修正ループや過剰なアウトプットが発生することもあります。
2. 運用面でのリスク
■スキル依存
開発者に一定の知識がないと生成コードの正誤判断ができず、検証段階でバグが発生した際に対応が困難になる可能性があります。
■プロジェクト方針とのミスマッチ
プロジェクト固有のコーディングルールや設計思想と乖離したコードを生成するケースも見られました。
■解釈のズレによる手戻り
AIが仕様意図を誤解し、不要な機能や誤った仕様を実装するケースがあります。
長期的な活用戦略
Cursorの導入により、チーム開発に様々な良い効果があった反面、課題も見えてきました。
Cursorを継続的に活用していくためには、ルール整備やチーム全体でのスキル向上が重要です。
私たちのチームでは、今後以下のような取り組みを通じてCursorをより積極的に活用していこうと考えています。
1. 品質管理プロセスの確立
今後は生成コードの継続的なチェックと修正を前提とした運用体制を構築し、定期的な効果測定を継続していく予定です。
また、プロジェクト固有のコーディング規約や開発ルールをAIに伝えることができるCursorの「Project Rules」機能を活用し、プロジェクト内で統一されたコード生成ルールの策定を進めていきたいです。

2. チームのスキルレベルの底上げ
AI生成コードを教材として活用し、ベストプラクティスや設計手法を学習するとともに、仕様把握力を養成してチーム全体のスキルレベル向上を目指します。
3. 知見の管理と共有
Cursorの便利機能や使い方をチーム内でドキュメント化して、コードの一貫性や品質向上の取り組みを行っていきます。
まとめ
Cursorは確実に開発効率を向上させる強力なツールですが、適切な運用ルールと継続的な改善プロセスを組み合わせることで、その真価を発揮できます。
今後もCursorをどんどん活用し、さらなる開発効率の向上を目指していきたいと思います。
ペアプログラミングの相棒として、ぜひCursorを検討してみてください!