【イベント参加】Oracle HeatWave Meet in Tokyo

イベント

2025.12.4

Topics

この記事は NHN テコラス Advent Calendar 2025の4日目の記事です。

はじめに

2025年11月06日、ANA インターコンチネンタルホテル東京で開催された「Oracle HeatWave Meet in Tokyo」 に参加しました。

今回のイベントは、HeatWave の最新アップデートや AI / ML 活用はもちろんですが、何より「国内企業ユーザーが実際にどう使っているか」というリアルな知見が満載でした。MySQL を利用している企業にとっては、
「これからのデータ基盤はどうあるべきか」を考えさせられる濃厚なセッションが続きました。

本記事では、パートナー企業として参加した視点から、各セッションで得られた「技術的ポイント」と
「運用・ビジネス面での気づき」を整理します。

オープニング

日本オラクル株式会社 常務執行役員 クラウド事業統括 エンタープライズ営業統括 木邨 央憲 氏より、イベントのテーマが紹介されました。

「シンプルな構成でデータを資産に変える」

これは当日を通してもっとも繰り返し語られたキーワードで、HeatWave が目指す「複雑なアーキテクチャや追加ツールを必要とせず、MySQL を拡張してそのまま高度分析まで持っていく」という価値を端的に示すメッセージでした。
また、10月に開催された Oracle AI World 2025 のアップデートも共有され、HeatWave が AI / LLM 活用に向けてどのように進化を続けているかも紹介されました。

パネルディスカッション

このパネルでは、国内ユーザーとして「株式会社イープラス」、「ジニアス・ソノリティ株式会社」の担当者が登壇し、HeatWave を業務にどう活用しているかが語られました。

■ パネルで共有された主なポイント

  • 大量データ分析のリードタイム短縮
    • 従来はバッチ処理が前提だった分析処理が、即時実行に近い体験へ。
  • ETL/データコピーの削減
    • DWH やデータレイクへのコピーを減らし、MySQL のまま分析できる構成のメリットが語られました。
  • アプリケーションチームでも扱える分析環境
    • 「専門的な DWH スキルがなくても分析に活用できる」という声が印象的でした。

いずれも、「HeatWave だから新しいことができる」というより、「既存の MySQL 環境を大きく崩さずに実現できる」ことが価値として語られていました。

講演会

主催講演では、10月の Oracle AI World 2025 で発表された最新アップデートの紹介がありました。
機能は多岐にわたりますが、その中でも「これは現場で役立つ」と感じたポイントを4つのテーマに分けて紹介します。

1.「移行と運用」がもっと気楽に

まず取り上げられたのは、既存の MySQL 環境をスムーズに HeatWave へ移行するための機能強化です。

■ 新しいマイグレーションツール

  • GUI ベースで直感的に操作でき、移行工数を大幅に削減してくれます。「これなら試してみようかな」と思わせる手軽さがありました。

■ Autopilot

  • SQL を解析して最適なインデックスを提案してくれるだけでなく、「それを作ったらどれくらい速くなるか」「作成に何分かかるか」まで教えてくれます。
    ここまで具体的だと、運用の意思決定が非常に楽になります。

■ Full Stack Disaster Recovery 対応

  • OCI 上での DR 構成も、より少ないステップで構築可能に。
    既存環境から “無理なく移れる” というメッセージが強調されていました。

2.開発者体験の向上

次に紹介されたのは、HeatWave の開発生産性を高めるための拡張です。

■ MySQL REST Service

  • スキーマから REST API を自動生成します。これまで自前で書いていたミドルウェア層を飛ばして、直接 CRUD 操作が可能になるのは地味ながら強力です。

■ JSON Duality View

  • SQL と JSON、どちらの形式でもデータを扱える柔軟なデータモデル。

■ WebAssembly (WASM) 対応

  • Rust / Go / C++ のコードを動かしたり、Python から AutoML を呼び出したりと、開発言語の選択肢が広がりました。

■ Python SDK

  • AutoML や AI 機能を Python から利用しやすくする公式 SDK。
    開発者が HeatWave に直接アクセスしやすくなることで、アプリケーション側への組み込みもよりシンプルになると説明されていました。

3.Lakehouse・データ分析基盤の強化

分析領域でも多くのアップデートが紹介されました。

■ マテリアライズド・ビュー & 高速一時表

  • クエリ結果のメモリ保持や、一時表の in-memory 化など、リピート分析や複雑な処理のパフォーマンスを底上げする機能です。

■ オブジェクトストレージ連携の強化

  • HeatWave Lakehouse で ACID 準拠の Delta 形式を直接クエリ可能に。
  • データレイクとの壁がますます低くなっています。

■ クエリ結果のエクスポート

  • 分析結果をさまざまなファイル形式でストレージへ出力可能。

■ 自動リフレッシュ

  • ストレージ上のデータ変更をリアルタイムに反映。
    「データベース × Lakehouse」を統合して扱える点が特徴として強調されていました。

4.AI・AutoML との統合強化

最後に紹介されたのが、HeatWave と AI 機能の統合です。

■ MySQL AI

  • 生成 AI、DB 内 LLM、AutoML、類似検索などを一体化。

■ NL2SQL

  • 自然言語から SQL を生成し、非エンジニアのデータアクセスをサポート。

■ ベクトルインデックス & ハイブリッド検索

  • セマンティック検索の高速化(最大100倍!)や、キーワード検索と組み合わせた RAG の実現など、モダンな検索要件に標準で対応してきました。

■ MCP サーバー

  • LangChain や Python SDK と連携し、AI エージェント構築を支援。

AI・LLM を「外部サービスとして呼び出す」のではなく、データベースの内部で完結するという点が大きな進化ポイントでした。
私が特に強く惹かれたテーマが、「オンプレミス環境における AI 活用」と「自動インデックスの進化」の 2 つでした。

■ オンプレミス環境でも活きるAIのあり方

会場で話を聞きながら感じたのは、「AI を使うために環境を大きく変える必要はない」というメッセージでした。日本企業の多くがオンプレミスや閉域網を前提にしており、「AI を使いたいけれど、データを外に出せない」という制約が常にあります。
その中、データを外部に送らずに手元の環境のまま AI を活用できる方向性が示されたことは、現場で働くエンジニアとして非常に心に残りました。
「今の環境を守りながら、AI の恩恵をどう取り込んでいくか」という観点は、これからますます重要になると感じています。

■ 判断を支えてくれる自動インデックス

もう一つ印象的だったのは、自動インデックスに関する説明でした。
普段、データベースを扱っていると「どのインデックスが本当に必要なのか」、「追加した方がいいのか、負荷が上がるだけなのか」といった判断に迷う場面が多くあります。
今回の話では、単に「自動で作ってくれる」というより、判断に必要な材料を整えてくれる存在としての役割が強調されていました。
最終的な意思決定は人が行うけれど、迷ったときに背中を押してくれるような、そんな実務寄りのサポートに大きな価値を感じました。

テクニカルセッション

ライトニングトーク #1「AI・LLM モデルフリー評価指標:HeatWaveベクトルストアの活用」


■ 登壇:情報・システム研究機構 統計数理研究所 主任 URA / 特任准教授 本多 啓介 氏

今回のライトニングトークでは、RAG の評価を「検索精度」だけで捉えるのではなく、モデル更新などでベクトル空間がどのように変化したのかを SQL だけで確認するというアプローチが紹介されました。
「品質の変化を DB クエリだけで可視化する」という発想は目から鱗でしたし、AI と DB が統合されている HeatWave だからこそ可能なテクニックだと感じました。

ライトニングトーク #2「AWS 環境に閉じて、シンプルに始められる MySQL HeatWave on AWS」

■ 登壇:株式会社スクウェア・エニックス 情報システム部 Online Service Infrastructure(OSI)
Scalable System Infrastructure for Gaming(SIG)神津 和之 氏

2つ目のライトニングトークでは、オンプレミスや IaaS 上で稼働していた MySQL を HeatWave on AWS に移行した際の実践的なノウハウが共有されました。
Aurora への移行検討時に直面した課題を、HeatWave でどう解決したか。
特に util.dumpInstance や Heatwave_load を使った具体的なデータ移行フローは、「AWS 上でもこんなにシンプルに PoC ができるのか」という驚きがありました。
また、Managed MySQL としてバックアップやサイズ変更にも対応しており、既存システムへの「追加の選択肢」として、無理なく組み込める柔軟性は大きな魅力だと再認識しました。

「MySQL HeatWave ユーザーがつながり、広がる場 ~ HeatWavejp のご紹介 ~」


■ 登壇:株式会社スマートスタイル 内藤 達也 氏

最後のセッションでは、MySQL HeatWave のユーザーコミュニティ「HeatWavejp」が紹介されました。
知識共有・相談・交流・勉強会など、ユーザー同士が学び合える場として運営されており、Slack を中心に気軽に質問できる雰囲気が印象的でした。
最新情報をキャッチアップしたい人や、他社の活用事例を知りたい人にとって、コミュニティは良い入り口になりそうだと感じたセッションでした。

クロージング


■ 登壇:日本オラクル株式会社 MySQL / HeatWave Cloud 事業部 事業部長 加納 康世 氏

最後のクロージングでは、MySQL HeatWave が目指す未来像が紹介されました。
OLTP・OLAP・AI / ML・データレイク分析・バックエンドサービス化まで、アプリ開発に必要な機能を HeatWave ひとつでシンプルに統合できるというメッセージが強調されていました。
また、パートナー企業との連携やコミュニティ「HeatWavejp」の取り組みについても触れられ、
「HeatWave を中心に、ユーザー同士・技術者同士がつながりながら成長していくエコシステム」を感じられる内容でした。今後のアップデートにも期待が高まる、前向きな締めくくりでした。

懇親会

懇親会では、参加者同士や Oracle 関係者との交流が活発に行われ、HeatWave の具体的な活用方法や PoC の進め方など、実務に直結する議論が多く見られました。

まとめ

今回のイベントを通じて強く感じたのは、HeatWave は「既存構成を大きく変える刷新プロジェクト」ではなく、既存 MySQL 環境に分析性能と AI 活用力を加える「加速レイヤー」であるという点です。
特に日本企業では、データ活用のリードタイム短縮は今後さらに重要なテーマになります。

当社は Oracle パートナーとして、HeatWave をはじめとしたクラウド分析基盤の導入・設計・運用を支援しています。「うちの環境でも HeatWave を使える?」「MySQL を使っているけど、分析基盤をどう構築すべき?」といった初期相談レベルから、ぜひお気軽にお問い合わせください。
今回のイベントで得た知見を基に、引き続きお客様のデータ活用支援に貢献してまいります。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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Koo

料理と音楽が好きなデータベースエンジニアです。 MySQL と Google Cloud、特に Cloud Spanner への関心が高いです。

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