【Amazon Quick】BI を生成しつつデータを深掘りしてくれるチャットエージェントを構築する方法
はじめに
Amazon Quick のカスタムチャットエージェントは、チャットで質問するだけでデータ分析ができる機能です。
ペルソナや回答形式も制御できるとのことで、気になったので実際に試してみました。
結論からお伝えすると、BI の生成からデータの深掘り、さらには要因分析まで、チャットだけで実現できました!
ということでこの記事では、Amazon Quick でカスタムチャットエージェントを構築する方法をお伝えします。
また、実際にデータ分析を実行した結果もお見せします。
全体の流れは以下の通りです。
- トピックの作成
- スペースの作成
- カスタムチャットエージェントの作成
- エージェントによる分析の実行
なお、上記の作業はすべて Web ページ上の操作のみで完結しており、コードを書く必要はありません。
エンジニア以外の方にも、ご参考になれば幸いです。
前提
本記事の内容は、以下環境で実施しております。
- Amazon Quick Enterprise プラン
- us-east-1(バージニア北部)リージョン
- Quick Sight 上にダッシュボードを構築済み
検証にあたり、Google Analytics 4(GA4) と Salesforce を統合した想定のダミーデータを Amazon Redshift に格納しております。
ダッシュボードは、このデータをもとに作成したものです。
全体の構成は以下のようになります。

※ダッシュボードの BI レポートを自然言語で生成する手順は以下の記事でご紹介しました。
今回も同じデータセットを使用しています。
1. トピックの作成
トピックは、チャットエージェントが質問に答える際に参照するデータ基盤です。
どのデータセットを使うか、各カラムが何を意味するのかをここで定義します。
トピックの設計がエージェントの回答精度に直結するため、丁寧に設定することが大事です。
参考: Working with Amazon Quick Sight Topics
トピックの作成手順
Amazon Quick のホーム画面で、左メニューの「トピック」をクリックします。

「トピック」ページ右上の「トピックを作成」をクリックし、以下を入力します。

- トピック名:
マーケティング × セールス分析 - 説明:
マーケティングとセールスの統合分析用トピック
データセットの選択
「トピックにデータを追加」画面で、データセットを選択します。
GA4 と Salesforce を統合した想定のダミーデータです。
まずデータセットのうちいずれかを選択し、「作成」をクリックします。
ここでは、 integrated_summary で作成します。

トピックの準備が完了するまで少し待ちます。 作成が完了すると、概要ページが表示されます。

続いて「データ」タブから「データセットを追加」ボタンで、以下のデータセットも追加します。
marketing_funnelmonthly_channel_summarymonthly_summary

データフィールドの調整
次に「データフィールド」画面に移動します。
各フィールドは、自動的に日付・ディメンション・測定(メジャー)のいずれかに分類されます。
さらに、表示名やシノニム(同義語)を手動で調整することで、自然言語クエリの精度が向上する仕組みです。

一例ですが、以下のようにシノニムを入力しました。
Channel→ 流入元Form Reach→ 到達数Lead Count→ リード、問い合わせOpportunity Count→ 商談
これで、ユーザーが「リードと商談の件数を教えて」と質問した際に、正しいデータを参照できるようになります。
地道な作業ながら、エージェントの実用性を左右する重要なステップなので、根気良く設定しました。
参考: Making Quick Sight topics natural-language-friendly
トピックの動作確認
設定が完了したら、右上の「このトピックについて質問する」ボタンをクリックして動作を確認します。

検索バーで「昨年の受注金額は?」と入力し、正しく結果が返ってくることを確認します。

2025年の受注金額が表示されております。
トピックがデータセットを正しく参照できていることが確認できました。
以上でトピックの作成は完了です。
2. スペースの作成
スペースでは、チャットエージェントが参照するナレッジ(データソース)を一元的に管理することができます。
エージェントがデータにアクセスできるよう、Quick Sight のダッシュボードや、1で作成したトピックをスペースに登録します。
まず、左メニューの「スペース」脇の+ボタン「新しいスペースを作成」をクリックします。

左上の「タイトル」と「説明」を入力します。

- タイトル:
マーケティング分析スペース - 説明:
マーケティング × セールスの統合分析用スペース。GA4 と Salesforce のデータを統合し、ファネル分析・チャネル分析・受注分析が可能。
次に、中央の「ナレッジを追加」より、事前に作成したダッシュボードとトピックを追加します。
ダッシュボードは、Quick Sight 上に作成済みの BI レポートを選択します。
また、トピックは1の手順で作成したものを選択します。

ナレッジを追加すると、「すべてのナレッジ」に反映されます。

これでスペースも準備できました。
3. カスタムチャットエージェントの作成
左メニューの「チャットエージェント」脇の+ボタン「チャットエージェントを作成」をクリックします。

自然言語で入力する画面が表示されますが、ここではスキップします。

すると、エージェントの設定画面が表示されます。

各項目を以下のように入力していきます。
タイトルと説明
- タイトル:
マーケティング分析エージェント - 説明:
GA4 と Salesforce の統合データを使い、マーケティングファネル・チャネル別分析・受注分析を自然言語で行うエージェント
エージェントのペルソナ
「参照ドキュメント」に、エージェントの振る舞いを定義した Markdown ファイルをアップロードします。 ここでは以下のような内容を記載します。
Agent identity(エージェントの役割): あなたはマーケティングデータ分析の専門家です。 GA4(Web アクセスデータ)と Salesforce(リード・商談データ)を統合したデータを使い、 マーケティング施策の 効果分析、ファネル分析、チャネル別パフォーマンス分析、受注分析を行います。 日本語で回答してください。
※全体が長いため、上記ではエージェントの役割部分のみ掲載しています。
実際には、上記の他にペルソナ指示、トーン、回答形式、回答の長さなども記載しております。
ナレッジソース
「スペースをリンクする」から、先ほど作成した マーケティング分析スペース を選択します。
カスタマイズ
ウェルカムメッセージと推奨プロンプトを設定します。
- ウェルカムメッセージ:
マーケティング分析エージェントです。GA4 と Salesforce の統合データを使って、 以下のような分析が可能です: ・ファネル分析(サービスページ閲覧→フォーム到達→問い合わせ→リード→受注) ・月次トレンド分析(受注金額・件数の推移) ・チャネル別パフォーマンス分析 ・業界別・デバイス別の詳細分析 何を分析しましょうか?
- 推奨プロンプト:
- 先月の受注金額と受注件数を教えて
- チャネル別の受注金額を比較して
- マーケティングファネルの各段階の数値と離脱率を見せて
入力が完了したら、右上の「プレビューを更新」をクリックします。
4. エージェントによる分析の実行
エージェントのプレビュー画面は以下のようになります。

ここからは、実際にエージェントへダミーデータの分析を依頼してみます。
月別受注金額の推移を聞いてみる
まず、「2025年の月別受注金額の推移を見せて」と質問してみます。
約1分後、以下のグラフや表の BI が生成されました。


また、エージェントは以下のようなインサイトも返してくれました。
【主なインサイト】 ・年間合計: 約4,539万円 ・最高月: 11月(4,584,844円)— 年間を通じて最も高い受注金額 ・最低月: 6月(2,456,204円)— 前月比-45.3%と大幅に落ち込み ・3ヶ月複利成長率: 6.26% ・トレンド: 3月〜5月にかけて上昇した後、6月に大きく落ち込み。 7月以降は回復基調で、10月〜12月は400万円台を維持 6月の大幅な落ち込みが目立ちます。 この原因の深掘りや、チャネル別の内訳分析なども可能です。
単にデータを表示するだけでなく、トレンドの要約やインサイトまで提示してくれる点が印象的ですね。
追加で、「さらに分析を深めますか?」と提案もしてくれます。

落ち込み要因を深掘りしてみる
追加の分析提案の中に「6月の落ち込み要因」とあり、どのような回答が得られるのか気になります。
「6月の落ち込み要因を解説して」と続けて質問してみます。

再び約1分後、エージェントは5月と6月のファネル比較を行い、3つの要因を特定してくれました。
【要因①: ファネル上流の大幅減少】 サービスページ閲覧数が816→583と約28.6%減少しており、 ファネルの入口段階から流入が大きく落ち込んでいます。 【要因②: 有料広告チャネルの受注ゼロ】
(途中で出力されたBIです)
| チャネル | 5月 | 6月 |
|---|---|---|
| Microsoft広告 | 2,995,942円 | 0円 |
| Google広告 | 1,497,971円 | 0円 |
| 自然検索 | 0円 | 1,228,102円 |
| メール | 0円 | 1,228,102円 |
| Twitter/X | 0円 | 0円 |
5月に約450万円を稼いでいた Microsoft 広告と Google 広告からの受注が、 6月は完全にゼロになっています。これが最大の要因です。 【要因③: 受注単価の低下】 ・5月: 3件で約449万円 → 平均単価 約150万円/件 ・6月: 2件で約246万円 → 平均単価 約123万円/件 受注件数の減少に加え、1件あたりの単価も約18%低下しています。
最後に、推定される背景とさらなる深掘り提案が表示されました。


このように、カスタムチャットエージェントでは、文脈を踏まえた BI や深掘り分析、次のアクションの提案が回答に含まれます。
さらに、回答に対しての追加の深掘りも可能で、必要なだけ分析を継続できる点が大きなメリットですね!
まとめ
今回は、Amazon Quick のカスタムチャットエージェントを作成し、実際にマーケティングデータの分析を試してみました。
改めて、印象に残った点をまとめます。
- トピックの作成からエージェントの設定まで、コードを書くことなくブラウザの操作のみで完結します
- ペルソナ設定により、回答のトーンや形式のコントロールが可能です
- 単なるデータ検索にとどまらず、BI の生成からインサイトの提示、追加分析の提案まで自律的に行ってくれます
- 文脈を踏まえた会話形式の分析が可能で、回答に対する追加の深掘りも可能です
- ダッシュボードとトピックを整備すれば、エンジニアでない方もすぐに活用できます
自分の経験も踏まえて特に感慨深かったのは、手作業でのデータマイニングが大幅に不要になるという点です。
従来であれば、データ傾向の把握、異常値の要因特定、複数の切り口からの比較など、すべて自力で行う必要がありました。
アナリストはダッシュボードを何度も切り替えて仮説を立てながら、いつ終わるともわからない検証に向き合っていたのです。
一方、カスタムチャットエージェントでやることはチャットから質問するだけです。
ファネル比較・チャネル別分析など回答は横断的で、要因も BI を示しながら提示してくれます。
またデータの深掘りにかかる時間も、数時間から数分程度まで短縮できそうです。
データに基づいた意思決定を組織全体で加速させたい方にとって、Amazon Quick のカスタムチャットエージェントは非常に有力な選択肢となりそうです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
Amazon Quick に興味をお持ちの方は、『Amazon Quick 導入パッケージ』紹介ページの中ほどにて、活用例もご紹介しています。
よろしければご覧ください。
2025年入社。上級ウェブ解析士、統計検定2級。10年以上アクセス解析を経験した後、データ分析を極めるべく日々チャレンジしております。
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