サービスサイエンスを通して顧客満足を分析する方法について
サービスデスクの中村哲です。
今回のアドベントカレンダーは、技術的な観点から少し離れてサービスサイエンスという考え方を利用してサービスに対する顧客満足を把握するのに役立つフレームワークをいくつか紹介致します。
サービスサイエンスは、マーケティングなどと比べると馴染みが薄いのでピンと来ない方も多いと思いますが、サービスサイエンスを使うことによってお客様が何を理由にサービスを選択しているのかを把握するのに役に立ちます。
サービスに対する誤解
サービスサイエンスを説明する時に必ずといって良いほど、以下の誤解をもたれますがこれはサービスサイエンス観点では不要と思ってください。
・サービス=無料
・サービスは精神論
・サービスは人と人がいるところに発生する
これらの前提は、今回の話す内容とは関係ないためここではサービスという定義を簡単にするために、
サービス=普段お客さんに提供している業務
として捉えてください。
※サービスとは何か?をきっちり説明すると論文みたいな長くて難しい話になってしまうので。
顧客満足度について
顧客満足度を把握するには、アンケートなどで「満足」、「不満」の2パターンや、段階的な「満足」、「やや満足」、「やや不満」、「不満」などで測ることが多いですが、満足/不満はサービスのどの要因が影響を与えていて、どの時点で評価が下されているかというのは、あまり意識されておりません。
お客様は、サービスのどこに価値を感じ、どのタイミングで評価を行っているのかを把握する方法を紹介いたします。
ただし、サービスサイエンス的な考えであっても様々な要因が影響を与えるなかで判断することになるので、一つの方法ですべて対応できるようなものは、(わたしの知る限りでは)今のところ見つかっておりません。なので、複数のフレームワークを組み合わせて多面的な観点で判断する必要があります。
そこで今回は、以下三つの考えかたを紹介いたします。
・狩野モデルとフラワーモデル
・事前期待
・サービス品質の6つの構成要素
狩野モデルとフラワーモデル
狩野モデルでは、サービスは、コア・サービスとサブ・サービスにて構成されており、コア・サービスの品質を上げ続けても顧客満足はそれに比例して上がるわけではなく、サブ・サービスによる品質向上が顧客満足に大きく影響を与えるという考え方です。
※参考 「優先順位付け」
例えば、鉄道の場合で考えた際に目的地までの移動が「コア・サービス」であり、「サブ・サービス」としては、
・社内販売
・快適な座席
・分かりやすい予約システム
などの「移動」という以外のものがサブ・サービスになります。
これを基幹システムに置き換えた場合は、ERPがコア・サービスとなり、使いやすいUI、親切なサポート、外出先からの利用などがサブ・サービスに当たります。
基幹システムの安定稼動に多くの工数を割り当て可用性、キャパシティを高く保っていてもそれが必ずしもそれがお客様の満足度にはつながらず、その他の要因が満足度を決定している場合がありますので、コアサービス、サブサービスのバランスを確認することで顧客満足度のポイントが判明するのではないでしょうか。
フラワーモデルも同様に、コア・サービスを魅力的に見せるのはコア・サービスを取り巻くサブ・サービスによるものという考え方です。
フラワーモデル
繰り返しになりますが顧客満足度が上がらない場合は、コア・サービスとサブ・サービスのバランスを確認するというのは、顧客満足度に与えている要因を切り分ける上で有効となります。
ただし、気をつけなくてはいけないのは、コア・サービスの品質上昇によって顧客満足度に与える影響は小さいですが、品質低下は大きく顧客満足度を下げることになります。サブ・サービスは、逆に品質低下による顧客満足度の低下が小さいとされます。
先ほどの鉄道の例であれば、車内販売が品切れだったりするよりも、鉄道での事故や遅延などによって移動が出来ないという事のほうがインパクトが断然大きくなるということです。また、サブ・サービスの品質低下による顧客満足度が大きく下がる場合は、サブ・サービスとコア・サービスが入れ替わっていることも見極めなくてはいけません。
事前期待
これは、至極単純ですがサービスの価値は、お客様が思っているサービスへの事前期待が実際の品質より高いか低いかが顧客満足度に影響を与えるという考え方になります。サービスへの事前期待が低ければ、ちょっとしたことで顧客満足は高くなりますが、事前期待が高ければそれ以上のサービス品質を提供しなくては、顧客満足を満たすのは困難になるばかりか評価は悪くなります。
ここでは、対外的に提供するサービスであればブランドイメージ、社内へのサービス提供であれば今までの評判等が大きく左右する致しますが、提案時の何でも出来ますというアピールや全社的なプロジェクトのように事前期待を上げすぎることによる提供後の不満につながることを意識しなくてはなりません。
そして、事前期待が日本一高い期待を背負っているのにもかかわらず高い顧客満足を提供しているディズニーランドって言うのは、やっぱり凄いなといつも感じます。
サービス品質の6つの構成要素
最後にサービス品質を支える6つの構成要素についてお話したいと思います。
この6つの構成要素を考えるときにGoods Dominant LogicからService Dominant Logicへの移行にともなう使用価値やオペラントの特性、価値提供ではなく価値供創の重要さについても必要になるのですが、そんなことを専門用語使って長々書いても(私自身が)よく分からないので簡単な感じで書いてみるようにします。
まず、サービスを評価するにあたり「成果品質」と「プロセス品質」ということについて簡単にご説明すると、食事をする時においしいものを直ぐに、頼んだ通りのものを食べれる事を評価するのが「成果品質」です。安いうまい早いの理論です。
それに対して結果を受けるまでの間のやり取りを評価するのが、「プロセス評価」になります。
おいしくて、安い料理を提供されても、店員の態度が横柄だったり、店が汚れているなどで嫌な思いをした際は、プロセス評価の低下により顧客満足が低下しますし、注文してたものを急遽変更した際に柔軟に対応された際は満足度が上がることを示しております。
成果評価、プロセス評価を構成する要素として、
上記のような分類ができ、成果品質とプロセス品質の両方を満たしたものが、顧客満足度が高くなるということになります。
実務では、アンケート同様に結果を受けて判断する成果品質が重視されることが多いと思います。
また、プロセス評価を把握するのは、どのタイミングにて判断するのかという判断が人によって異なるためばらつきが出ることもありますが、一度このサービス品質の6つの構成要素からサービスを見つめなおす際の全体像を把握するのにとても役に立つので是非使用してみて下さい。
まとめ
この三つの考え方は、自分自身が関わっているサービスを客観的に見れる方法として是非活用頂きたいのですが、個人的に興味のあるサービスにも当てはめると同じようなサービスがある中で、なぜそのサービスが気に入っているのかの判断が出来るかと思います。
おすすめは、事前期待にも書きましたがディズニーランドをサービスサイエンスを通して見るとものすごい高品質のサービスを提供しているのが、分かるのでとても参考になるかと思います。
次回は、プロセス品質という部分を深堀し、価値が生まれる瞬間や価値供創という内容について書いていこうと思います。
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